「お母さん、いる?」「いりません、ガチャ」
うっかりそんなオチかと思っちまったよ。封印再度。
100ページを残したところで犬が吠えた理由までが明かされ、そこで一旦、読むのを中断したので、森博嗣という作家を過小評価してしまった。プロバビリティに賭けた、なんちゅう論理性に欠ける作家だと。
凶器の隠し方・壺の開け方・密室の作り方など、あとがきの作品批評に書いてあるとおり、確かに理系の知識がないと思いつくことのできないトリックが多い。読後の感想は「推理小説である必然性はあるのか」だった。
過去最高のTVゲームを挙げよ、と言われたら、迷わず「かまいたちの夜」を推挙する。言及するまでもなくサウンドノベルの最高峰。「かまいたちの夜」にハマって「夜光虫」「弟切草」「魔女たちの眠り」「学校であった怖い話」「街」、果ては「サウンドノベルツクール」にも手を出してしまったが、「かまいたちの夜」に追随できるサウンドノベルはなかった。頂上に「かまいたちの夜」、七合目あたりに「街」、他は評価できず。
昨夏も「かまいたちの夜×3」をやりたいがために、後輩からPS2ごと借りて、半徹でプレイしたものだ。かまいたちの夜1・2を犯人・トリックを1発で見破ったのはDの隠れ自慢ポイント。3はなんとなく選択肢に乗っかっていったら正規ルートに入った、みたいな。選択肢で犯人・トリックが分かったところがある。ちょっとくやしい。
3でそろそろ大団円、というところであるキャラが出てきたのは、本当にびっくりした。ミステリーとホラー、現実と非現実が見事にミクスチュアされた最高傑作だと思う。
「かまいたちの夜」のプレイ後は、長いRPGをクリアした後の達成感ではなく、合唱コンクールに出場し終えた後のような、責務からの逃脱感の方が強かったように思う。擬似ではあるが死への恐怖、生きるために真相を解明しなければならなかったことからの解放感は、水中で呼吸をずっと我慢していたあとの最初の一呼吸に近いものがある。
その「かまいたちの夜」だ。原作者は我孫子武丸。彼の著作も読んでみたい、と思うのが心理だろう。結果は・・・期待はずれだった。推理小説と呼ぶよりは娯楽小説に近い。もしくは推理トリック集。そこそこ楽しめるのだが、心を捉えて放さない、エレメンタリィな部分がなかった。
我孫子武丸の「かまいたちの夜」は、ゲームという媒体を通じて光り輝いた。森博嗣の「封印再度」は、10部作の5番目だと言う。10作品を読破しないと正規の感想文は書けないだろう。何年、何十年かかるか分からないがな。SとMの掛け合いは楽しいのだが、話の本筋にどうしても必要か、と問われれば、Dの意見ではNOだ。岡嶋二人の「なんでもや大蔵」や「山本山コンビ」のような必然性がない。金田一少年の活躍に違和感を感じるのも、主人公が高校生だからだ。後付けを見るかぎり、10部作の舞台はサイバーなコンピュータ・低温実験室・地下室・キャンパス内の密室など多岐に渡るようだ。1作品だけで彼の評価を下すことは、愚かしいことなのだろう。暇があったらチャレンジしてみるリストに追加。
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